100年時代、100年以上引き継がれる贈り物で幸せに!
親・祖父母と私、贈り物の攻防戦
年始、仲の良い祖父母に会いたくて実家の福岡に帰省した私は、現在26歳の正真正銘の成人なのですが、なんとお年玉をもらってしまいました。
「もう大人だから!」「むしろ私があげなきゃいけないから!」と主張する私の鉄壁の防御もなんのそので、根気よく繰り出される「私があげたいから!」という熱いお言葉にノックアウトされ、ありがたく頂戴しました。
ふと、思いました。この攻防戦、最近多いな…!?と。
昔は、遠慮なしに欲しいものは何でもおねだりしていた私ですが、大人への成長の過程で遠慮を覚え、社会人になって自分である程度の物が買えるようになりました。祖父母は、(きっと)可愛い孫である私のために色んなものを贈りたいと思ってくれているのですが、私は私で祖父母のことを大事に思うがゆえに遠慮してしまいます。
しかし、そんな私でも両手をあげて喜んでしまう贈り物があります。それは、いわゆる「お下がり」です。以前、母親が若かりし頃に着ていたワンピースをお下がりでもらったことがありました。デザインが素敵だったことも前提ではありますが、何よりも同じものをシェアしている感覚が嬉しかったです。
このように、子どもがある程度の年齢までいくと、家族から「与えられる贈り物」に遠慮してしまうことが、しばしば起きるかと思います。
贈る側と贈られる側、両方が幸せになれるヒントがあるのではないか…そんな予感を信じて「引き継がれる贈り物」について紐解いていきます。
「引き継がれる贈り物」の実態
100年生活者研究所のアンケートを実施したところ、「親・祖父母から大切なものを引き継いだことがある」と回答した人は41%でした。2、3人に1人程度の割合で、大切なものを引き継いだ経験があるようです。
では、具体的にどのようなものを引き継いでいるのでしょうか。アンケートにおいて自由回答の形式で聴取し、「テキストマイニング」という回答のなかで出現の多いものを大きな文字で表す分析を用いて調べてみました。
【「引き継がれる贈り物」の経験について】
では、具体的にどのようなものを引き継いでいるのでしょうか。アンケートにおいて自由回答の形式で聴取し、「テキストマイニング」という回答のなかで出現の多いものを大きな文字で表す分析を用いて調べてみました。
【「引き継がれる贈り物」の内容について】
最も大きく出現したのは、「母」。母親から引き継いだことがある人が相対的に多いようです。
贈り物の中身では「指輪」「ネックレス」「着物」「アクセサリー」など、自分では購入しない希少なものが多く挙げられている傾向が伺えます。
さらに具体的な回答を詳しく見て行くと、いくつかのカテゴリーが見えてきました。
宝飾品・指輪など貴重なもの
着物や宝飾類など、一番大切にしているのは指輪。着物も日常的に着用し、大切にしている。(30代/女性)
生前、母のダイヤの指輪と真珠のネックレスを引き継いだ。(50代/女性)
ラピスラズリのネックレスです。母のお友達が石の輸入をして作ってくれて、母にプレゼントしてくれた物らしいです。それを母が生前、私にプレゼントしてくれました。(50代/女性)
愛用していたもの
ピアノ。これからも大切にしていき、自分の子供にも引き継いで欲しい(20代/女性)
両親が新婚旅行で使った昔のフィルム式カメラを譲ってもらい、私の新婚旅行でも使用しました!温かみのある写真が撮れるので、今でも大切に使っています。(40代/女性)
亡くなった父が仕事で使っていた特殊なコンパスやカラス口の万年筆など、かなり昔の文具類を学生の時に譲り受け使用していた。今も大事に持っている。(50代/女性)
調理器具を色々引き継ぎました。料理が好きなので、昔ながらの鍋や調理器具を大事に使っています(50代/女性)
代々受け継がれているもの
母の大切な親戚が持っていた腕時計。その方が亡くなった後、暫くは母が大切に持っていたが、30代に入った自分に使って欲しいと渡された。(30代/女性)
振袖は祖母から母へ、母から私へと引き継いでいます。最近 成人式で見かける振袖とは また違って 趣があって、とても気にいっています。(50代/女性)
おばあちゃんが付けていた指輪をお母さんから譲り受け大切にとってあります。(50代/女性)
贈り主の人生を感じられるもの
母が父に買ってもらった指輪。おそらく結婚指輪なのだと思います。(50代/女性)
父親が残した、色んな書類など。戦時中の書類なども有りました。写真は1番ですね。(60代/男性)
父が画家だったので、絵画を残してくれました。(70代/女性)
「引き継がれる贈り物」の価値
実際に引き継いだものは、どれも素敵な贈り物ばかりですね…!
では、贈り物として大切なものを引き継げると、どのような気持ちになれるのでしょうか。
こちらも、アンケートで聴取してみたところ、「自分も誰かに引き継いでいきたいと思った」「思い出が共有されたみたいで嬉しかった」「お金で買えるもの以上の価値を感じた」が同率で最も高く45%で、およそ2人に1人程度があてはまる結果に。
【「引き継がれる贈り物」の価値】
新しく購入された贈り物は、流行的なタイムリーに欲しいものだと、時代の移り変わりとともに不要になってしまうことも。もらったときの喜びが刹那的なものに留まってしまうこともあるでしょう。
一方で、引き継がれた贈り物は、また誰かに引き継いだり、贈り主の思い出も共有されたりするため、あげた人ともらった人の関係性を持続させてくれるものになります。良好な繋がりはお金で買えないからこそ、かけがえのない価値を感じることができるのかもしれません。
人生100年時代に、100年以上引き継がれる贈り物を
さらに、今回のアンケート結果より、大切なものを引き継いだことがある人は、引き継いだことがない人よりも人生全体を「幸せ」だと思う人が、13%も多いことが明らかになりました。
【人生の幸福度について】
持続する幸せである「ウェルビーイング」の定義について、世界保健機関(WHO)では「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にある」としており、「身体」「心」「繋がり」を健康の条件として掲げています。
私たち100年生活者研究所の過去の調査によると、幸せにおいては、この3つのバランスが取れていることが大事なのですが、私たちの多くは「繋がり」の優先度を低くしてしまっていることが明らかになっています。(https://well-being-matrix.com/100years_lab/posts/100news_230825/)
大切なものを引き継いだことがある人たちは、贈られた物を介して人と繋がることができているため、幸せのバランスが取れているのかもしれません。
人生100年時代、スマホ画面ワンクリックで何でも買えるようになったからこそ、贈り物も選択肢が無限に広がってしまいました。小さい頃ならまだしも、成長した子どもの本当の欲しいものが分からず、頭を悩ませ、デパートやネット通販を長時間さまようことに…!
そうならずとも、相手の人生を幸せにできる贈り物は、すでに家のなかに眠っています。思い出とともに引き継いでみてはいかがでしょうか。100年以上引き継がれる、幸せの贈り物になるかもしれません。
【調査概要】
■調査名 :人生100年時代における親から子・祖父母から孫への「贈り物」の現状は?
■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員 20代-80代男女 863名
■調査手法 :LINEによるアンケート調査
■調査期間 :2024年1月
幼少期から自分の祖父母にたくさんお世話になった経験や、趣味のボランティア活動にて老人ホームに訪問した経験などから、社会における世代間交流の活性化の一助になりたいと思うように。
「将来の夢は、全シニアの孫娘」を目標に掲げ、日々シニアマーケティングの業務に従事。