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2024.11.07

人生100年時代、 私たちは、どのようにはたらくのだろうか

11月23日の勤労感謝の日は「生産と働きに感謝し合うことが大切」という考えで、1948年に制定されました。当時の平均寿命は、男性で55.6歳、女性で59.4歳でした。(*1)
そこから人々の寿命が伸びるにつれて、はたらく時間も長くなっています。定年は次第に延長され、2021年4月より施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保が企業の努力義務とされました。

一方、社会の価値観が変わる中で、仕事に対する意識も変わってきているようです。
人生も、はたらく期間も長くなっていくこれからの社会で、私たちはどのようにはたらくと幸せなのでしょうか?

*1 厚生労働省、「平均余命の年次推移」より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life09/sankou02.html

私たち100年生活者研究所では、2024年9月、20~80代の「現在働いている人」746名を対象に、「はたらき方に関する調査」を実施しました。
今回は、その調査についてレポートします。

人生100年時代、仕事の大切さは6番目

まず、「生活において大切なもの」について、聞いています。

生活において大切なもの ランキング

これは、「生活において大切なもの」について、「今」「最近5年間で大切さが上がったもの」「最近5年間で大切さが下がったもの」について聞いた回答のランキングです。

「今、大切なもの」では、「健康的な生活」が7割弱と、抜きんでて高くあがりました。これは「最近5年間で大切さがあがったもの」でも5割強でトップになっています。パンデミック期を経て、より「健康的な生活」の大切さが上昇していることがうかがえます。

次に「家族との生活」が続くことを踏まえると、ここでの「健康的な生活」には、身体的な健康のみならず、それを含む社会的な生活としての健全さを含んでいるように感じられます。

この中で、「仕事」(15.9%)は6番目という結果となりました。食事、趣味、友人との交流に続く順位となっています。その一方で、「最近5年間で大切さが下がったもの」では、「仕事」(17.8%)は1番目にあがります。

また、別の「自分の生活の中では、仕事を一番に優先する方だ」との質問に対しては、「そう思う/ややそう思う」と答えた人は、全体の2割強にとどまりました。

これらを見ると、価値観は少しずつ変化しており、生活全体の中での仕事の重要度が低下する傾向にあることがうかがえるのではないでしょうか。

仕事の優先度

はたらく時は「価値観に合い、ストレスなく、健康的な生活を維持」できることを重視

次に、「はたらく時に重視すること」について聞きました。

はたらく時に重視すること ランキング

「ストレスが少なく働ける環境」「健康的な生活を維持できる」「自分の価値観や信念に合う仕事」がトップ3で、「十分な報酬」よりも高い結果となりました。

先ほどの「人生で大切なもの」の質問で、「健康的な生活」が抜きんでて高かったことを踏まえると、「生活全体の価値観」と「はたらく時の重視点」がつながっていることがうかがえます。

「健康的な生活を大切にする」生活を送るために、はたらく時も「健康でストレスが少ない働き方」を重視するということです。

「経済的な報酬が十分であること」は40.8%でトップグループです。長くなる人生を支える基盤となる報酬は、重視されていることがわかります。

しかし、ここでは重要な報酬と同等以上に、「自分の生活上の価値観に合っている仕事であるか」が、はたらく時に重要になっていることが示唆されました。

生活と仕事は、分ける? 分けない?

但し、生活の価値観とはたらく時の重視点はつながりつつも、生活者の意識上は、その二つを分けて考える傾向があるようです。

こちらは、仕事とそれ以外の生活の関係について聞いた質問です。

これを見ると、「仕事とプライベートの生活は分けて考える方だ(58%)」と考える人が、「仕事は生活の一部であり、分けられないと考える方だ(28%)」と考える人よりも明らかに多くなっています。生活と仕事を一体のものとして考えるよりも、分けて考える方が多数派であるということです。

生活と仕事の関係認識

最近では、ワークインライフやワークライフインテグレーションのように、「仕事を生活の一部として捉え、仕事と生活を一体化させる」考え方を耳にすることも増えましたが、現状では、生活と仕事を切り離して考えるワークライフバランスの考え方をする人が多いようです。

今の生活の実態としては、自分らしい「健康的な生活」を維持するために、「仕事とそれ以外の生活は分けて考える方がよい」ということでしょう。

テクノロジーの進化と共に、「いつ・どこでも仕事ができる」ようになりました。それは、はたらき方の自由度を高めました。しかし、「いつ・どこでも仕事ができる」ということは、同時に「これまでは仕事が入り込めなかった時間にも仕事が入り込んでくる」ということです。このような労働環境の変化も、仕事と生活の切り分け意識に影響しているのかもしれません。

70歳まで働きたい人はどんな人?

先ほども書いた通り、改正高年齢者雇用安定法によって、企業は70歳までの就業確保が努力義務化されました。

では、生活者は「70歳まではたらくこと」について、どのように考えているのでしょうか?

下のグラフはその結果です。

20~60代の今働いている人に「70歳まで働きたいか」を質問すると、約4割が「働きたい」と答えました。

70歳まで働きたいか

年代別にみると、20代から40代にかけて下がりつつある中で、50代に少し上昇し、60代に入ると6割代に跳ね上がります。

70歳まではたらくことをイメージできずに「そんなに長くは働きたくない」と考える人も、50代になると70歳まではたらくことを具体的に考えられるようになるのかもしれません。

70歳まで働きたいか:年代別

では、「70歳まで働きたい人」にはどのような特徴があるのでしょうか。

こちらは、先ほど紹介した「働く時に重視すること」の質問です。ここでは、20~60代の「70歳まで働きたい人」と全体を比較してみました。

概ね全体と同じような傾向ではありますが、特に「価値観や信念に合う仕事であること」が高く、一番重視することにあがっています。

70歳まで働きたい人の重視点

価値観に合う仕事で幸せになる

パンデミック期を経て、リモートワークや時差通勤など、働き方はより柔軟で多様になりました。

同時に、生活の価値観も変化しています。その中で、今、生活全体において「仕事」の重視度は下がる傾向にあるようです。

「仕事を一番に考える」人が二割であることを考えると、「仕事」を特別に大切なものと考える人は少なくなっているのではないでしょうか。

価値観が多様化し、そのトレンドが変わりつつある今、「仕事」は「健康的な生活」「家族」「食事」「趣味」と横並びに比べられて、その優先順位を考えるものになっているようです。その時々によって、「前回は仕事を優先したけれど、今回は仕事よりも趣味を優先しよう」ということが普通になっているのかもしれません。

しかし、依然として生活の中で、仕事は長い時間を占めています。

実態として、仕事は生活全体にどのような影響を与えているのでしょうか?

ここでは、仕事の満足度と幸福度の関係を見てみました。

仕事の満足度別 幸福度

「仕事や働き方の満足度が高い」人は、そうでない人と比べて幸福度が2.02ポイント高くなっていました。これは、仕事や働き方に満足している人は、幸せになりやすいということです。

これを見ると、仕事とはたらき方は、依然として人生の幸福度に大きく影響するようです。

では、人生100年時代に幸せに生きていくために、仕事やはたらき方にどのように向き合えばよいのでしょうか?

そのヒントは、「価値観に合う仕事」に取り組むことにあると思います。

先ほど見たように、「70歳まで働きたい」と考える人は「価値観に合う仕事」を重視していました。自分の価値観に合う仕事であれば、長く続けられるというのは、直観的も理解できます。

ここで、働く時に「価値観に合う仕事」を重視する人の特徴をみてみました。

すると、「価値観に合う仕事」を重視する人は、仕事への満足度、情熱、成果創出意識が高いことがわかります。

価値観に合う仕事の重視度別 働き方意識の差

これは、考えてみれば当たり前のことです。

自分の「価値観や信念に合う仕事」に対してであれば、情熱をもって取り組み、実現するために努力するのは当然のこと。結果として、仕事が実現して成果につながる可能性も高くなるでしょう。

とはいうものの、価値観に合う仕事に取り組むのは簡単なことではありません。 これまで、「自分の価値観に合わない」仕事はたくさんあったと思います。 これからも、なくなることはないでしょう。

しかし、そんな中でも「価値観に合う」仕事を増やすために取り組むことはできるのではないでしょうか。

仕事全体の中で、少しでも「自分の価値観や信念に合う」業務の数を少しずつ増やしていく。 業務単位でなくとも、ある仕事の中に「自分の価値観や信念に合う部分」を見出していく。 そうすれば、長い人生の中で長く取り組む仕事で、幸せを得やすくなるかもしれません。

自分の価値観から、働き方を考える

私たち、100年生活者研究は、グループ会社と協働して企業研修プログラムの開発も進めています。こちらは100年生活者研究所がタカラトミーと共同開発した『100年人生ゲーム』を活用したプログラムです。

この研修では、企業や組織内において、どのように自分の人生の幸福につなげていくかを見つめなおし、一人ひとりが「自身の価値観に従ってはたらけるようになる」ことを目指します。その結果として企業の生産性向上につなげていきたいと考えています。

研修にご関心のある方は、100年生活者研究所(info_100yearlab@hakuhodo.co.jp)までご連絡ください。

【100年生活者調査~はたらき方に関する調査~】

■調査目的 :100年生活の実態について把握する

■調査手法 :インタネットモニター調査

■対象地域 :日本 全国

■調査日時 :2024年9月

■調査対象者 :20代~80代の現在働いている男女 746名

■調査会社 :株式会社アスマーク

プロフィール
副所長
田中 卓
95年博報堂入社。23年から100年生活者研究所副所長。
一人ひとりが100年間の人生を、100%生ききることができる社会を目指し、
研究に取り組んでいます。
共著に『マーケティングリサーチ』。