幸せの解像度を高めるために
3月20日は、国際幸福デー(International Day of Happiness)です。
毎年、この日には幸福度の世界ランキングが発表されています。昨年、2024年の日本は51位でした。
私たち100年生活者研究所も、毎年この日に、「人生100年時代のウェルビーイング」をテーマにしたリサーチの結果を発表しています。
今回は、2025年2月に、日本、アメリカ、中国、デンマーク、イギリス、オーストラリアの6カ国で実施した最新の調査結果を、①ウェルビーイング篇、②AIと幸福篇の2つの記事でレポートします。こちらは、①ウェルビーイング篇です。
100歳まで生きたいは、いまだ3割未満
今年もはじめに、100年生活者研究所が最も注目している指標、「100歳まで生きたいと思うか」について見ていきます。
2025年も、「100歳まで生きたい」と考える人は、27.7%と3割未満でした。
これは2022年10月の調査からの2年半で、ほとんど変化がありません。
また、少しずつではあるものの、「まったくそう思わない」が回を重ねるごとに増えており、100歳まで生きたくないと考える人の態度がはっきりしてきたことがうかがえます。
100年人生意向 推移

昨年とは調査対象国が変わっているのですが、国別でみると昨年同様に、日本が圧倒的に低いことがわかります。
100年人生意向 国別比較

「ウェルビーイング」の社会への浸透が進んでいる
こちらは、「ウェルビーイング」の認知についてのグラフです。
ウェルビーイングは、一般的に「身体的・精神的・社会的に良好な状態」のことを表すといわれ、「(広義の)幸福」と訳されることも多い言葉です。
日本において、このウェルビーイングの認知は年々高まり、今年はとうとう50%を超えました。
「ウェルビーイングを大事にする」という考え方自体が、日本社会へ浸透している様子がうかがえます。
ウェルビーイングの認知度 推移

ウェルビーイングは、2030年以降を見据えたポストSDGsのキーワードといわれ、特にここ1年間、いろいろな場面で目にすることも増えました。
Googleトレンドで最近5年間の検索数の推移をみると、「ウェルビーイング」の検索数は着実に増加しており、社会的に注目度が高まっていることがわかります。
日本におけるウェルビーイングの検索数 推移

日本の幸福度は低いままにとどまる
しかしその一方で、生活者が感じている幸福度を見ると、昨年からまったく高まってはいません。
「ウェルビーイング(=幸福)が大事」という考え方が浸透しているにも関わらず、その浸透が生活者の幸福度という形では、まだ表れてはいないということです。

幸せは日常生活で意識されていない
こちらは、日常生活の中での「幸せについての意識と行動」に関するグラフです。
日本では、日常生活の中で「幸せ」について意識し対話する人が、他の国と比べて圧倒的に少ないことがわかります。ウェルビーイングという言葉の社会浸透は進んでいても、実際の日常生活ではあまり意識されていないのです。
他の5か国をみると、およそ「3人に2人」が幸福について普段から意識」し、「2人に1人が幸せについて対話」をしています。対して日本では、「幸福について意識するのは3人に1人」で「対話するは5人に1人」にとどまります。
幸せについての意識と行動

では、「幸せについての意識と行動」と幸福度には、どのような関係があるのでしょうか。
調査の結果をみると、まず「幸せ」を生活の中で意識するだけでも幸福度は高まっていることがわかります。
さらに、周囲との関係で「幸せについて対話」している人や、「自分の幸せをわかってもらえていると感じる」人は、幸福度が高まる傾向にありました。
幸せについての意識と行動別 幸福度の変化

生活者がウェルビーイング概念を生活の中に取り入れるには、まず、自分の幸せやウェルビーイングについて、日常生活の中で意識し、だれかと話をすることから始めるのが大切なのかもしれません。
幸せの解像度を高める
幸せに暮らすために、今回の調査結果から何が言えるのでしょうか?
この記事の前半で、「幸せを意識し対話すると幸福度が高まる」というデータを紹介しました。私は、これがヒントになると思います。
まず、日ごろの生活で「自分の幸せ」を意識して、自分が幸せに感じる体験の内容やその時の感情の動きをできるだけ具体化し、言葉にしていく。これは、「自分の幸せの解像度を高める」ことだと思います。そうして、「自分の幸せの解像度を高める」と、日ごろの生活から「より確実に」幸せを感じられるようになると思います。
その時には気づかなかったけれど、後になって「あの時は幸せだった」と気づく経験は、だれしもあるのではないでしょうか。幸せは人生で最も大切なものの一つであることにも関わらず、「幸せは、日常生活の中では見落とされやすい」ようなのです。
だからこそ、「自分の幸せの解像度」を高めて、(世間一般ではなく)自分の幸せに確実に気づきやすくすることが重要なのです。そして「幸せに気づく力(幸福発見力)」を高め、見落としがちな幸せをも感じられるようになれば、「人生で感じる幸せの総量」を増やしていけると思うのです。
「自分の幸せ」は日々の経験の中で少しずつ変化していくものだと思います。
生活の中で「今現在の自分の幸せ」の解像度を意識する時間を、とってみてはいかがでしょうか。

一人ひとりが100年間の人生を、100%生ききることができる社会を目指し、
研究に取り組んでいます。
共著に『マーケティングリサーチ』。