AIは人を幸せにするのだろうか?
3月20日は、国際幸福デー(International Day of Happiness)です。
毎年、この日には幸福度の世界ランキングが発表されています。昨年、2024年の日本は51位でした。
私たち100年生活者研究所も、毎年この日に、「人生100年時代のウェルビーイング」をテーマにしたリサーチの結果を発表しています。
今回は、2025年2月に、日本、アメリカ、中国、デンマーク、イギリス、オーストラリアの6カ国で実施した最新の調査結果を、①ウェルビーイング篇、②AIと幸福篇の2つの記事でレポートします。こちらは②AIと幸福篇です。
生成AI を「よく使う」のは一割
この②AIと幸福篇では、「幸せとAIの関係」についてみていきます。
まずは、生成AIの使用頻度のグラフです。
日本人の生成AIの使用頻度は、「ほぼ毎日使う」と「よく使う」で約1割。6割は「まったく使わない」ようです。他の国と比べて、日本のAI使用率は25年の時点で、明らかに低く、差があることがわかります。
国別 生成AIの使用頻度

AIをよく使う人は幸せ?
そして、「AIをよく使う人」と「それ以外の人」の幸福度を比べると、すべての国で「AIをよく使う人」の幸福度が高くなる傾向が見られました。
イギリス、デンマークと同様、日本もその差が大きくなっています。
国別 AIをよく使う層とその他層の幸福度比較

AIが自分の幸せに与える影響について、生活者はどのように認識しているのでしょうか?
「AIは自分の幸せに、良い影響を与えていると思うか」、それとも「悪い影響を与えていると思うか」、それぞれ聞いてみました。
すると、「よい影響」「悪い影響」のいずれの質問とも「そう思う」「ややそう思う」の合計が2割に届かない結果となりました。
「どちらともいえない」と回答する人が5割を超えて最も多く、「そう思わない」「あまりそう思わない」を足すと8割を超える人が、「AIは自分の幸せによい影響をあたえるとは言い切れない」し、かつ「悪い影響を与えるとも言い切れない」と考えているのです。
つまり、AIが「自分の幸せ」にとってよいものなのか、悪いものなのか「判断できない」と考える人が多い様子がうかがえます。
AIが幸せに与える影響認識

全体の平均としては、「AIが幸せによいものか悪いものか、判断しきれない」という結果でした。
では、AIを「よく使う」人は、どのように考えているのでしょうか?
このグラフは、AIが幸せに与える影響を、全体平均と「AIをよく使う」層で比較したものです。
ここから、AIを「よく使う」層は、全体平均と比べて「よい影響がある」と考える人も「悪い影響がある」と考える人も、共に多いこと。そして「悪い影響がある」よりも「よい影響がある」と考える人が、明らかに多いことがわかります。
そして、これは日本だけでなく、他の国にも共通して見られる傾向なのです。
つまり、AIを「よく使う」人は、「AIは自分の幸せに、悪い影響がある」ことを認めつつも、それ以上に「よい影響がある」と考える人が多いということです。
AIの影響評価 全体とよく使う層の比較

AIの評価によって、認識と使い方はどのように異なるのか
次に、「AIは自分の幸せによい影響を与える」と考える人と、「悪い影響を与える」と考える人で、AIの捉え方がどのように異なるのか、その差をみてみました。
AIの認識の回答の差が大きい項目トップ3をみると、「AIは幸せによい」と考える層は、「AIは生活の質を高めている」「世界をよりよく変えていく」「仕事の効率を高めている」と認識。
日々の仕事など、実際にAIによる生活の質の変化を実感している人が多いようです。
一方、「悪い影響を与える」と考える人は、「AIは仕事に悪い影響をもたらす」「AIの進化に対する不安や恐れ」「人間の意思決定に過度な影響力を与えるリスクがある」と考えていました。
AIの進化によって自分の仕事の内容や雇用に与える影響を気にしている様子がうかがえます。
AIの認識 評価層別の特徴

次に、この2つの層の具体的なAIの使い方を比べてみました。
仕事での使用では、この2層の回答のほとんど差が見られません。
対して、プライベートでは、「幸せに悪い」と考える層よりも、「幸せに良い」と考える層の方がAIを活用する人が明らかに多くなっています。
仕事で使うだけでなく、プライベートで積極的に活用することが、AIを自分の幸せに役立てるための、方法の一つかもしれません。
AIの使用用途 評価層別の特徴

幸せのためにAIを使う
この「AIと幸福篇」から、幸せに暮らすためのどのようなヒントが得られるのでしょうか?
もう一つレポート①ウェルビーイング篇では、「幸せを意識し対話すると幸福度が高まる」というデータを紹介し、「自分の幸せの解像度」を高めて、自分の幸せに確実に気づきやすくすることが重要なのではないか、と書きました。
そして、この②AIと幸福篇では、「プライベートで積極的に活用することが、AIで幸せになるための方法の一つかもしれない」と書いています。
この2つを合わせて考えると、自分の幸せのためにAIを使う方法も考えられそうです。
現在のAIは、いろんなことが相談できます。
たとえば、AIを活用して自分の幸せな体験を具体化し、言語化を助けてもらうことも十分に可能でしょう。
プライベートの領域で、進化するAIの力を借りて「自分の幸せ」の解像度を高めていけば、日々の生活の中でよりたくさんの幸せを感じられるようになるのかもしれません。
幸せは特別な日やイベントだけでなく、日常の中に静かに息づいています。
まず幸せの解像度を高めて、その瞬間を見逃さないようになれば、幸せが増えるのではないでしょうか。

〔100年生活者調査~2025年定点調査~ 〕
■調査目的 :100年生活の実態について把握する
■調査手法 :インタネットモニター調査
■対象地域 :日本 全国
■調査日時 :2025年2月
■調査対象者 :20代~80代の男女 2800名
■調査会社 :株式会社アスマーク
〔100年生活者調査 ~2025年定点調査 国際比較~〕
■調査目的 :他国と比較して、日本の100年生活の実態について把握する
■調査手法 :インタネットモニター調査
■対象地域 :アメリカ、中国、デンマーク、イギリス、オーストラリア
■調査日時 :2025年2月
■調査対象者 :20代~70代の男女 各国600名
■調査会社 :株式会社エクスクリエ

一人ひとりが100年間の人生を、100%生ききることができる社会を目指し、
研究に取り組んでいます。
共著に『マーケティングリサーチ』。