テクノロジーで広がる「居場所」の選択肢
過去の記事では、孤独・孤立をさせない「居場所づくり」「つながり」の重要性を取り上げましたが、リアルに人に会い、会話することの大切さを実感しました。
「居場所」をテーマにした高校生とのワークショップに参加したときには、「わざわざ会いに行くだけでなく、デジタル上のつながりも居場所になる」という言葉に、ある意味戸惑いを覚えました。
「居場所」をテーマに思考を深めるなかで、「デジタル上のつながり」を含め今後の居場所の可能性を考えてみました。
テクノロジーが「居場所」になる可能性はあるのか?
とお話しいただいたのは、100年生活者研究所設立時にゲストとしてご登壇いただいた東京大学名誉教授の秋山弘子先生です。とても印象深く残っています。(※1)
多くの女性がソーシャルロボットに望む“相棒”は、まさに「居場所」となっていると思いました。
過去のアンケートでは、人生100年時代の今後について、ロボットによって日常の暮らしが便利になる可能性に言及する声もありました。
テクノロジーはこの1年、AI(人工知能)の進化により大きく変化したと言われています。これからはAI(人工知能)が日常生活に自然に溶け込み、便利さや快適さのみならず、私たちの「居場所」としても機能してくれるのかもしれません。
データでみる「居場所」の実際
改めて「居場所」についてアンケートを実施したところ、93%の方が「自分の居場所が必要」、83%の方が「自分の居場所がある」という回答でした。
自分の居場所

また、「居場所がある・どちらかというとある」と答えた人の75%が幸福度の得点が高く(7~10点)、6点以下人との差が46ポイントもあることが分かりました。
居場所と幸福度の関係

「自分の居場所はどこか?」については「家族といる空間(1241名)」「自分の個人的な空間(1006名)」を選択する人が多く、この中で両方を選択した人は534名でした。
人(ここでは家族)とつながることを求め、その反面、自分一人になることも求めています。人は様々な心を持ちあわせているのだから、その時の気持ちに沿った居場所が複数あることが望ましいことが分かります。アンケートでも一択の人もいますが、多くの人が複数を選択していました。

今回のアンケートの狙いの一つであったテクノロジーについては、居場所になっている人は多くはないという結果になりました。しかし、2022年に発表されたOpenAIによる対話型AI『ChatGPT』は社会に大きなインパクトを与え、実際に驚異的なスピードでユーザー数が拡大しています(総務省 令和6年版情報通信白書より)。そうした背景から、現状はデジタルよりも対人関係に居場所を求める構造を、テクノロジーが大きく変えるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
各種サービスにおける1億ユーザー達成までにかかった時間

これからは「居場所」もハイブリッドで、バランスを大切に
人生100年時代。寿命の延伸は、必ずしも良いことばかりをもたらすとは限りません。人との別れや自分自身のトラブルなど、悲しく辛い経験も同等に起こり得ます。だからこそ「居場所」はひとつに限らず、複数あると安心なのではないかと思います。その中の一つにテクノロジーに関するものが加わる未来もあるのではないでしょうか。
音声対話型のAI(人工知能)は「身近な話し相手」にもなり得るものに進化しています。会話を楽しみ、時には孤独・孤立緩和のコミュニケーションツールとしても利用され始めました。ペットロボットもAI技術向上で「心」の繋がりを持てるようにもなってきています。
AI(人工知能)は便利さや快適さ、そして「居場所」の一つとして日常生活に自然に溶け込み、機能するのはごく近い将来ではないかと思います。テクノロジーは苦手という方も安心してください。そのころには今よりもっと自然な会話で操作が可能になり、いつの間にか使いこなしている自分に気づくかもしれません。
でも、テクノロジーに頼りすぎるのは良くないようです。現実世界でのコミュニケーションが希薄になったり、なんでもやってくれるテクノロジーで主体性がなくなったりと心配な意見も見受けられます。
これからは複数の「居場所」を持つことを意識して、その中の一つにテクノロジーの助けを借りることが良さそうに思いました。アナログとテクノロジーの両方をハイブリッドで持ち、バランスをとることが、長い人生を幸せに過ごすことの助けになるかもしれないと思うのです。
おわりに
今回のアンケートの中に素敵なコメントがありましたのでご紹介します。
また、私たちの「100年生活カフェ かたりば」を居場所の一つにあげてくださった方が数名いらっしゃいました。ありがとうございます。カフェでお会いできますように。
【調査概要】
■調査名:人生100年時代、あなたにとっての「居場所」とは?
■調査手法: LINEによるアンケート調査
■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員 10-90代男女 2043名
■調査期間: 2024年12月

“100年生活を楽しむ” ための様々な活動の紹介・提案をすることで、社会に良い兆しが生まれる手助けができたらと考えています。