人生100年時代の受験は“前向きベクトル受験” 探す進学から叶える進学へ
要約すると
20代前半以下(イマドキ受験生)と20代後半以降(これまで受験生)で受験への向き合い方は変化している。
イマドキ受験生は進学後勉強に短期ゴールを設定して、叶えたいものの実現を強く願う世代。
さらにイマドキ受験志向を持った人は人生100年時代を生きることに対しても前向きである。
1月13日と14日に控える大学入学共通テスト。緊張の真っ只中!という受験生も多いはず。
センター試験から大学入学共通テストへの変更や、教育制度の改革など、今の受験生を取り巻く受験環境は昨今大きく変化しています。
そんな大きな変化の中、今の受験生はどんなことを考え、来たる共通テストや本試験に臨んでいるのでしょうか。
受験を伴う進学をした全国17歳~59歳の男女453名(進学予定の高校生を含む)にアンケートを実施し、
これまでの受験と、今の受験を比較することで、人生100年時代を生きていく若者の受験との向き合い方が明らかになりました。
今の受験生が置かれている教育環境
グローバル化や人工知能・AIなど技術革新が進む中、高校生を含む子供たちには「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動しよりよい社会や人生を切り拓いていく力(=生きる力)」が求められており、それに合わせて2020年度より、小学校から順に学習指導要領が改訂され様々な教育制度に様々な変化が起こりました。
具体的には
アクティブ・ラーニングを取り入れ主体的な学びを重視
プログラミング教育や主権者教育など社会で活用できるスキルや考え方を学ぶ場が拡大
2021年には「センター試験」から「大学入学共通テスト」へ
英語の実践力を測るため今後英語の民間試験活用も予定
まさに実学重視といわれる教育改革の流れを受ける受験生は、現在20代前半以下の世代であり、
それ以前の受験生である20代後半以降の世代と、今回のアンケートの受験や将来に対する意識で大きく差が出る結果となりました。
ここからは20代前半以下の世代を「イマドキ受験生」、20代後半以降の以前受験生だった世代を「これまで受験生」と定義し、
2つの世代を比較することで、「イマドキ受験生」の実態を解明していきましょう。
イマドキ受験生はやりたいことを“見つける”だけではなく、“叶えたい”ものが明確にある
突然ですが、読者の皆さんは、進学先での勉強に何を求めていましたか?
「進学先で行いたい勉強の目的」について聞いたところ、これまで受験生は、「将来のやりたいことを叶えるため」と答えた方より「将来のやりたいことを見つけるため」と答えている人の方が20代後半では4.5ポイント、30代では11.7ポイント高くなりました。
対して、イマドキ受験生は、「将来のやりたいことを見つけたい」と同じスコアで「将来のやりたいことを叶えるため」と 答える人が多く、20代前半では「叶えるため」の方が6.7ポイント上回りました。
またイマドキ受験生は「将来のやりたいことを叶えるため」と答えた中でも、「とてもそう思う(9-10点)」と答えた人が10ポイント以上高く、「将来やりたいことを叶えるため」という気持ちがかなり強いことが分かります。
進学先での勉強は、「やりたいことを見つける」場所だと考えていたこれまで受験生に対して、イマドキ受験生には「やりたいことを叶えるため」という軸が追加されていることが見えてきました。
【受験生が進学先で行いたい勉強】
進学先での勉強の使う先は5年以内と、短期ゴールを設定している
次に、「進学先での勉強内容を活用するのは何年後をイメージしているか」聞きました。すると、イマドキ受験生の方がこれまで受験生より、「5年以内」に使いたいと回答する人が10ポイント以上多く10代では57.3%、20代前半では56.7%となりました。 また、これまで受験生の方の約3割の人が「ゴールを設定していない」と答えたことも特徴でした。
【進学先での勉強の活用の目安】
ここまでで、イマドキ受験生はこれまで受験生と比較して、具体的なやりたいことを短期的に使うことを意識しながら受験に向かう姿が見えてきました。ではこのイマドキ受験生の彼らは、短期的に自分のやりたいことを叶えることだけを意識して受験に向かっているでしょうか?
“学び”への姿勢も貪欲なイマドキ受験生
明確にある「将来のやりたいことを叶えるため」に、短期的に勉強内容を活用したいと考えるイマドキ受験生では、受験の目的として、「就職に有利なこと」や「資格の取得」が、約7割と高いスコアになっています。
しかし、その一方で「視野を広げたい」や「知識を身につけたい」というポイントも高く、これまで大学生が60~65%であるのに対し、イマドキ受験生は75%以上のスコアになっています。
これは短期的な目的だけでなく、「広く深く学ぶこと」自体に、貪欲に向き合っていると言えるのではないでしょうか。
【受験の目的】
イマドキ受験志向を持つと人生100年時代にも前向き
ここまでで、就職にも学問にも前のめりなイマドキ受験生の実態が見えてきました。
ではこのような受験の志向を持つ方は、人生100年時代をどのように捉えているのでしょうか?
ここでは年齢を問わず、イマドキ受験生と同じように、「やりたいことを叶えるために勉強する」と答えた方かつ、「進学後の勉強を卒業後5年以内に使うことを意識している」と答えた方を「イマドキ受験志向者」と定義し、人生100年時代との向き合い方を調べました。
そうすると、「イマドキ受験志向者」は、人生100年時代を生きたいですかとお聞きした質問に対し、それ以外の方と比べて11.6も高く100歳まで生きたいと答えています。
短期的なゴールを掲げた受験をするイマドキ受験は人生100年への前向きな気持ちをつくることが分かりました。
【100歳まで生きたいか】
人生100年時代の受験は点からベクトルへ
今回の調査では、これまで受験生は、将来の自分を探しながら学問に向き合っていたのに対し、
イマドキ受験生は100年人生をポジティブに捉え、自分のやりたいことに向かって学問に邁進する姿が見えてきました。
これは、これまでの受験が、人生のライフイベントにおける「区切りや終着点」で、
イマドキの受験は自ら100年人生を切り開こうとする「前向きなベクトル」ととらえることができるのではないでしょうか。
受験は、よくマラソンに例えられてきました。これまでの受験は、終身雇用で働くシングルレールな人生が主流となっていた受験生にとって、受験は一つのゴールや区切りになっていました。
しかし、イマドキの受験は、人生100年を見据えたマルチルートが当たり前になり、そこには人生100年時代を生き抜くための「将来への前向きな意志」が必要になってきました。先が見えない100年人生だからこそ、そこに短期的なスキルや目標を求め、意志を持ち前向きに進む力を持った若者が出てきているのだと私は考えております。
そんな社会の変化に伴い、イマドキ受験では、受験はゴールではなく、“将来に向き合い、自分をアップデートする”チャンスとしてとらえられているのではないでしょうか。
このような将来に学問に前向きな意志を持った世代が、これからの人生100年時代を引っ張っていく原動力になっていくのではないかと私は感じています。
イマドキの受験は、受験生を、それぞれの未来に導いていくことでしょう。ただし、これは受験生に限ったことでしょうか。
“学び”と“100年生きたい”はつながっている!?その中でも受験のタイミングは特別
ヘンリー・フォードの言葉にあるように、学びはいくつだとしても生きる活力につながっています。
実際に大人になった今でも学ぶことを行っている方が43.3%もいます。
さらに学んでいるものがあると答えた方はそうでない方よりも10.9ポイント高く、人生100年時代を前向きに捉えています。
彼らは、イマドキ受験生と同じように、学ぶことで“将来に向き合い、自分をアップデート”しているのかもしれません。
【人生における学びの有無】
【学びの有無と100歳まで生きたいか】
学びは、人生100年時代を前向きにさせるファクターになることが言えるのではないでしょうか。
このように考えると、20歳であろうが80歳であろうが、学びは、人生100年時代に前向きに向き合う人を増やす要因になるではないでしょうか。
受験は、多くの人の人生において最初に将来に向き合う機会となります。ここでは、“将来に向かう力”と“自分をアップデートする力”が掛け合わさり、100年の長い人生に前向きに生きる気持ちを増幅させている、貴重なタイミングとも捉えることができるかもしれません。
そんな100年人生の大きな門出となる受験シーズンを過ごしている、イマドキ受験生を、私は陰ながら応援しています。
【調査概要】
■調査目的:人生100年時代の受験と学びに関する調査
■調査対象者:17歳~59歳の男女 453名
■調査手法:インターネットモニター調査
■調査期間:2023年11月
■調査会社:株式会社 H.M.マーケティングリサーチ