2024.09.26

未来洞察_想定アウトカム

未来洞察は、鳥の目と虫の目、抽象化と具体化、個人作業とチーム議論、言語化と可視化、など多種多様なプロセスを経て活動を進めていきます。例えば、テーマ設定、チーム編成、インプット情報の収集・分析、異なる領域の視点の統合、クリエイティビティを駆使した文脈やコンセプトづくり、コンセプトの可視化、などが挙げられます。その途中過程や成果物の事後活用などから得られるものとして、個人の知見や思考力の拡張、組織外の協業を加速させるネットワークやコミュニティづくりなどがあり、その代表例をご紹介します。

●「領域越境」力 ~鳥の目を得る~

シナリオ作成のためのインプットを収集・分析・統合する過程で、設定したテーマに関連する幅広い情報に触れ、気づきの対話を重ねていきます。徹底した対話を経て、検討開始時よりも俯瞰的で世界を見渡すことができる鳥の目や、それと関連して、現状を追認することへの問題意識やこれまでの前提を疑う態度が芽生えます。

●「新概念創発」力 ~「なぜ」「そもそも」を問う力を得る~

収集した情報や視点のピースを抽象化し、それを他者と共有しながら言語化していく作業です。今までにない新しい概念を作ることになるので、言葉を磨き続け、人に伝える努力をし続けることがとても重要です。個人やチームとしての未来への視座を上げること、それを組織やコミュニティでの共有知とすることにつながります。言葉選びの過程で無駄な要素を取り除き、シンプル化していく必要性に迫られ、「なぜ」や「そもそも」を問う力が養われます。いま、産業界で広がってきている存在意義、パーパスの議論とも深く関連します。

参照:経産省・環境省若手プロジェクト(2019)

参照:博報堂(2017)

●「共創関係構築」力 ~未来の「自分(たち)ゴト化」を進める~

チームで未来対話を重ねて練り上げた未来像やそれにひも付く具体的な構想や実装は、チーム内での解像度の高さから、誰か1人の天才のアイデアよりも腹落ちや自分(たち)ゴト化しやすい傾向にあり、コミュニティをひとつにする推進力を秘めています。「未来年表」を作成する企業同士の有志のコミュニティや、GXや生物多様性などの領域横断テーマにおける共助・共創関係の構築・強化の機運は広がりを見せています。

参照:GXリーグ(2023)

プロフィール
根本かおり
(株)博報堂 研究デザインセンター 上席研究員・イノベーションプラニングディレクター/東京科学大学 特任准教授。広告づくりの現場で多岐に渡る領域のブランディングに携わる。その後、未来生活者発想に軸足を置いた事業・商品開発、組織・人材開発などの業務に従事。モビリティ、ヘルスケア、脱炭素など、幅広い領域やテーマにおける未来像策定プロジェクトを企画・実施。