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2024.03.22

「推し活クライシス」は乗り越えられるのか!?

人生100年時代に遭遇する「推し活中止・休止危機」。その傾向と対策を探る

はじめに

「推し活、楽しんでいますか?」推し活が浸透し一般化するにつれ、そんな幸せな問いがある一方で、何らかの原因により、突如、推し活を中止・休止せざるを得ない危機=「推し活クライシス」を経験する人が増えているのではないでしょうか。人生100年時代ともなれば、その機会は一層増えることになると考えられます。

そこで今回は、推し活中止・休止の実態を明らかにし、その傾向とそれを乗り越える方法を対策として見ていくことで、そんな危機に遭遇したとしても人生100年時代を豊かに生きる、ポジティブなヒントを探っていきたいと思います。

推し活中止・休止経験は、推し活経験者中、約6割にも上る!!

まず、推し活の中止・休止経験を聞いてみたところ・・・

推し活をしたことがない人を含む全体では、約3割であることがわかりました。これは推し活経験者の約6割で、なんと推し活経験者の2人に1人は、推し活中止・休止を経験していることが明らかに。 こう見ると、推し活中止・休止の体験者は、思った以上にいるのではないでしょうか。

【推し活経験者の推し活の中止・休止経験有無】

推し活中止・休止は、精神的ダメージに!?

では、推し活中止・休止経験は、経験者にどのような影響を与えるのでしょうか・・・

推し活中止・休止経験者に「推しに対する喪失感を感じたことがあるか」聞いてみたところ、約6割に上ることが明らかに。推し活中止・休止によって、精神的ダメージを受けているのかもしれません。

【推し活経験者への推しに対する喪失感を感じた経験有無】

推し活中止・休止原因は、①自分>②推し>③推しと自分の両方の順!!

では、推し活中止・休止の原因は、一体何なのでしょうか・・・

その結果は、①自分が原因>②推しが原因>③推しと自分の両方が原因の順となりました。昨今、報道で賑わっている「推しの交際・結婚」や「推しの活動休止・終了・脱退」といったような、推しに関わる原因が最多なイメージと異なったのは、意外な結果でした。

【推し活中止・休止経験者のその原因】

推し活中止・休止は、予測できない危機=「推し活クライシス」!!

では、推しないし自分に関わる推し活中止・休止経験の原因を、さらに詳しく自由回答の結果でまとめると・・・

推しに関わる原因としては「交際・結婚」「活動休止・終了・脱退」「有名になりすぎた」「方向性変更」「推しの行動」など。また、自分に関わる原因としては「多忙」「お金が使えなくなった」「周囲の反対」「興味の変化」「健康・体調の変化」「家族の看病・介護」などで、様々な原因があることが明らかになりました。

推し、自分・・・いずれに起因しても、予測やコントロールできない突如起こりうる要素があり、推し活中止・休止は、危機=「推し活クライシス」になりえると考えられます。

推し活中止・休止後の再開率は約6割。再開すると約7割が幸福度UP!!

では、推し活中止・休止後、皆さん一体どうなってしまうのでしょうか。推し活の再開率と幸福度変化を見てみると・・・

推し活の再開率は約6割で、推し活再開者中、幸福度は「とても上がった」「上がった」の「上がった」計が、約7割に上ることが明らかに。推し活中止・休止を経ても、推し活再開で幸せになれることがわかりました。

【推し活中止・休止経験者の推し活再開有無】

【推し活中止・休止経験者中、推し活再開者の幸福度変化】

推し活再開への行動は、大きく5つに分類される!!

また、推し活再開者が再開までにとった行動を、推し活中止・休止の危機を乗り越える方法と捉え、その行動特徴を分析すると、下記の通り大きく5つに分類されました。

<①時間を置く>

<②目の前の他の事に取り組む>

<③推しへの愛情を持ったままの行動をとる>

<④これまでの推しと距離を置く行動をとる>

<⑤心身のバランスを整える>

それぞれの行動について、全体傾向および自由回答の特徴を見ていきます。

<①時間を置く>

全体の約4割がこの方法をとっていることが明らかに。自由回答を見てみると・・・

・少し時間を置いたので、気持ちが落ち着きました。そして改めてネットで調べて考えが変わりました。(50代男性/2カ月~3カ月未満*)

・意識して始めた事はないが、一度距離を置くと冷静になり、また新たな興味が湧いてくる時期が自然と来た感じ。(30代女性/1年~3年未満*)

*( )内は、推し活中止・休止から再開までの期間、以下同様

時間を置くことで、ネガティブな感情を抱かずに済んだり、新たなエネルギーが湧いてくるのかもしれません。

<②目の前の他の事に取り組む>

全体で見ると、こちらも上位の回答としてあがりました。自由回答を見てみると・・・

・推し活を一旦おいて目の前の事に集中(40代女性/1年~3年未満)

・失ったものはどうしようもないと諦め、眼の前にある物に目を向けた。気持ちがそっちに向くように、自分の気持ちを盛り上げるよう努力した。始めはふりだったがそのうち気持ちもついてきて、今では新しい推しが生きがいで幸せのもとになった。(50代女性/2カ月~3カ月未満)

目の前の他のことに取り組み集中し一旦離れることで、次のステップに進める気持ちになれるのかもしれません。

<③推しへの愛情を持ったままの行動をとる>

この行動も、全体グラフを見ての通り、多くの方が選択していました。自由回答を見てみると・・・

・メンバーの動向を見守った。(50代女性/3カ月~6カ月未満)

・推しが新たに活動していなくても、自分にできる推し活を探しながら、推しの活動をまつ。(50代女性/3年~5年未満)

・改めて彼らの活動を調べたり、音楽を楽しむ。ファンクラブに入り直す。(50代女性/5年以上)

・推しを見ないようにして過ごしていましたが、寂しい気持ちもあり、ほとんど見なかった映像を久々に見たら、推しの頑張っていた姿が思い出され、自分も楽しくカツドウしていたことを思い出せ、再び楽しめるようになった。(40代女性/6カ月~1年未満)

・思い出の音楽を聴きました。(60代女性/1年~3年未満)

・聖地巡礼のために、アメリカを1週間ほど周遊し、推しのことが大好きだった当時の気持ちを再認識するきっかけにすることができました。(40代男性/1年~3年未満)

・推し仲間と話し合った(50代女性/6カ月~1年未満)

推しが活動中止・休止などしていても、推しに近づける自分なりの方法をとることで、推しが好きなポジティブな感情を取り戻し、推し活再開に向けてパワーを取り戻せるのかもしれません。

<④これまでの推しと距離を置く行動をとる>

一方で、敢えて推しから離れていくような行動も見られました。自由回答を見てみると・・・

・推しと無関係の友達と、食事したり話したりした。気が紛れた。(50代女性/1年~3年未満)

・溜まっていた録画番組や雑誌類を一気に処分したら少しスッキリした。違う界隈もチェックするようになった。(20代女性/3カ月~6カ月未満)

・過去のグッズの整理をしました(40代男性/3年~5年未満)

・違うグループに興味を持って、推し活するようになった(40代女性/1年~3年未満)

その推しばかりに集中せず、視野を広げるための行動をとることで、気持ちの整理が出来るのかもしれません。

<⑤心身のバランスを整える>

グラフの複数回答の選択肢上では下位ですが、下記自由回答が見られました・・・

・体調を整えるようにした。(80代女性/2カ月~3カ月未満)

・上司にシフトの相談をした(50代女性/6カ月~1年未満)

・憎むことも怒ることもなく、過ごす。忘れようとも、なかったことにしようともせず、ありのまま過ごす。そうすることでたまに目にしたとき、心穏やかに見ることが出来る。(50代女性/5年以上)

・瞑想、自己分析(50代女性/6カ月~1年未満)

推し活の中止・休止は危機となり、心身のバランスをとることで、次のステップへ向かう英気を養えるのかもしれません。

また、回答特徴別に推し活中止・休止から再開までの期間を見てみると、実にそれぞれです。

つまり、皆さんひとりひとり、各自の再開ペースで、危機を脱する方法・対策、ストーリーがあるということです。推しとの関係性はそれぞれ。選択肢をもち、その中で自分らしく乗り越えることに不安を感じなくてもよい、ということではないでしょうか。

【推し活中止・休止経験者中、推し活再開者が再開までにとった行動(複数回答)】

推し活中止・休止は、1年未満で乗り越えられる!?

推し活中止・休止経験者が再開までにとった行動では、「時間を置く」が最も高く見られました。

自由回答で見るとその期間は様々ですが、全体としてどれくらいになるか見てみると・・・

やはり回答は分かれていますが、平均すると約26カ月=2年2カ月であることがわかりました。しかし、グラフの通り約5割は1年未満で推し活再開しており、早く中止・休止期間を脱するという希望が持てる結果とも言えます。

【推し活中止・休止経験者中、再開者の再開までの期間】

おわりに

しかし、たとえ「推し活クライシス」を迎えたとしても、その危機を乗り越えて推し活を再開すると、幸福度が上がるという傾向にあります。また、「推し活クライシス」はそれを乗り越えるのに、大きく5つの方法・対策があることが明らかになりました。

推しとの関係性に合わせて、それぞれのストーリーで危機を乗り越えて前進していくことで、人生100年時代を幸せに生き抜く力に繋がっていくのかもしれません。

人生100年時代、「推し活クライシス」を恐れて推しの沼にはまることを躊躇するのではなく、それぞれに一期一会の推し活を、ドラマチックに歩んでみるのもいかがでしょうか。

【調査概要】

■調査名:「推し活」の中止・休止と再開についての調査

■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員20~80代男女 818名

■調査手法:LINEによるアンケート調査

■調査期間:2024年2月

プロフィール
研究員
髙橋 薫
広告会社においてマーケティング職、営業職、管理部門職に従事。
社会は様々な立場の人が支え合っていると日々感じる体験からも、
人生100年時代どうしたらそれぞれポジティブに生きていけるか…
「多様多幸」に生きるヒントを探究していきます。