100年人生をともに過ごす「おはなししない友達」をつくろう!
今も昔も変わらず生活に溶け込むぬいぐるみ
あなたには、お気に入りのぬいぐるみやマスコット、人形がありますか?
幼少期に大好きなぬいぐるみを枕元に置いて一緒に寝ていた、そんな人もいるのではないでしょうか。
今、SNSで「ぬいぐるみ」と検索すると、一緒に出かけたり洋服を着せ替えたり、ぬいぐるみやマスコットと様々に遊ぶ投稿が多く見られます。この背景には、推し活ブームの流れで、推しのぬいぐるみを愛でる「ぬい活」が広がったことがあげられます。
好きなキャラクターや動物、非生物に至るまで、多種多様な「自分だけのぬいぐるみ」を愛で、「うちのぬい」と呼んだりするほど、ぬいぐるみとともに過ごす「ぬい活」。ぬいぐるみは今も昔も、多くの人々の生活の一部になっているのです。
ぬいぐるみ好きは幸せ?
2023年6月、X(旧Twitter)に投稿された「ぬいぐるみ界隈」(=ぬいぐるみを愛でる人々)に関する“あるつぶやき”が共感を集め、10万ものいいねがつき話題となりました。
投稿の内容は、日頃ぬい活投稿をしているアカウント同士の何気ないやりとりをピックアップし、「彼らのやさしい感性が好き」と評価したもの。
その「ぬいぐるみ界隈」の会話は、梅干しを作る過程で、水を入れていないはずのボトルの内側になぜか水滴がついた現象に対して、梅が「木に生っていた頃を思い出して夜な夜な涙」していたのでは、と表現し、さらに、梅に「かわいそうだから歌を歌ってあげる」と言うのです。
この一連のやり取りには、「童話の世界」「癒やされそう」「平和」などといったコメントが多く集まりました。
ストレス社会で生きる人々の殺伐とした投稿も多いSNSにおいて、このような優しい言葉は多くの人に癒しを与えたようです。
そこで一つ仮説が浮かびます。ぬいぐるみを愛でることは、ウェルビーイングなのではないか?今回は、100年時代における「ぬいぐるみを愛でる人」と「ウェルビーイング」の関係性をリサーチしました。
ぬいぐるみ好きのウェルビーイング
調査によると、少なくとも2人に1人はお気に入りのぬいぐるみ(マスコット、人形)と過ごした経験があることがわかりました。
「お気に入りのぬいぐるみや人形、マスコット」があった経験のある人の割合
実際に、現在の幸福度について調査したところ、「今お気に入りのぬいぐるみがある」という人はそうでない人に比べ、幸せレベル7点以上をつけた人の割合が7pt高く、幸福度がやや高いことが判明しました。
お気に入りのぬいぐるみがある人とない人の幸せレベルの差
では、お気に入りのぬいぐるみは具体的にどう幸せに影響しているのでしょうか?
お気に入りのぬいぐるみから得られるベネフィットを聴取し、幸福度ごとに比較してみると、幸福度が高い人(幸福度:8〜10点)と幸福度が低い人(幸福度:0〜5点)では、以下の項目で大きく差がつくことが明らかになりました。
「人に対して優しい気持ちになる」
「癒しが得られる」
「自分の気持に気づきやすくなる」
自分に対しても他者に対しても優しくなれることが幸福度に影響しているようです。
次に、「100歳まで生きたい」と思う人とそうではない人で、お気に入りのぬいぐるみから得られるベネフィットを比較してみました。すると、「100歳まで生きたい」と思う人ほど、以下のような感情を持ちやすいという結果になりました。
「ぬいぐるみを通して自己表現ができる」
「ストレス解消できる」
「想像力が豊かになる」
「人に対して優しい気持ちになる」
「一人の時間が大切になる」
その癒し効果でストレスが解消されるとポジティブでいられるのはもちろん、自分から何かを発信したり想像したりと能動的になれることも、人生観を前向きにしてくれる要因のようです。
先に述べたぬい活をする人のSNS投稿がどこかウェルビーイングなものに見えるのは、100年人生を豊かに生きる人同士の会話だからなのかもしれません。
ぬいぐるみが人を変える!?
さらに、約75%の人がぬいぐるみを愛でることで性格に変化があったと感じていることがわかりました。
具体的にどんな変化があったかを調査してみると、多い順に
「より想像力高まる」
「より明るい性格になる」
「より楽観的になる」
「より自己肯定感があがる」
という結果が出ました。
お気に入りのぬいぐるみを持つことによる性格への影響
また、自分の性格と幸福度の関係を調査したところ、特に、外交的、明るい、楽観的、穏やかと答えた人は70%以上が今の幸せレベルに7点以上をつけることがわかりました。
この事実と先に述べた結果から、お気に入りのぬいぐるみがあるほうが人は幸せを感じやすいのではないかと推測できます。
性格別の幸福レベル
さらに、お気に入りのぬいぐるみを持つことにより「優しくなった」「笑顔が増えた」という変化があった人も見受けられました。
“ぬいぐるみを愛でる”と聞くと、その人の性格や行動は物静かで内に閉じていくようなイメージを持つ人も多いかも知れません。しかし実際には、現実社会を朗らかに気楽に生きていくことにぬいぐるみが一役買っているようです。
お気に入りのぬいぐるみと幸せになろう
お気に入りのぬいぐるみとどのように過ごせば幸福度が高まるのでしょうか?
お気に入りのぬいぐるみとの過ごし方について、幸福度が高い層と低い層で比較すると、以下の5つで差が見られました。
「専用の場所に飾っておく」
「名前をつける」
「ペットのように日常的に話しかける」
「時々、抱きしめたり撫でたりする」
肌身離さず持ち運んだり洋服を着せ替えたりと時間やコストをかける必要はなく、ぬいぐるみを大切にするだけでも十分ということがわかりました。
一方で、名前をつけたり話しかけたりすることは、ぬいぐるみに人格を見出すような行為です。ある女性は「昔集めていたぬいぐるみを簡単に捨ててしまった経験があるが、それはぬいぐるみをモノとしてしか見ていなかったから。思い入れがあるぬいぐるみだったら、きっと簡単に捨てられなかった」と語っています。
ぬいぐるみを単なるモノとして扱うのではなく、友達のように想い接することが、ぬいぐるみから幸せを得るポイントなのではないでしょうか。
最後に、ぬいぐるみのどんなところが好きですか?と聞いたところ、次のようなコメントが多く得られました。
「とにかくかわいい見た目」
「ふわふわで柔らかいさわり心地」
「見ているだけで癒やされるところ」
「愛くるしいところ」
「いつも変わらずそばにいてくれるところ」
「何も言わず何でも受け入れてくれるところ」
ぬいぐるみは、「ずっと変わらずかわいいところ」が多くの人の心や行動にポジティブな影響を与えてくれているようです。
仕事も生活も周りの人も常に変化することが当たり前になる100年人生においては、たとえ喋ってくれなくても、たとえ自分では動かなくても、変わらず近くにいてくれるぬいぐるみが心の拠り所として大きな存在になるのかもしれません。
長い人生を少しでも豊かに生きていくために、みなさんもビビッときたぬいぐるみとお友達になってみてはいかがでしょうか。
【調査概要】
■調査手法: LINEによるアンケート調査
■調査対象者:100年生活者研究所 LINE会員 20-70代男女 2027名
■調査期間: 2024年10月
根っからのオタク気質。おもしろのタネを見つけて、突き詰めて、みんなと共有したい!
そうして面白くて飽きない「100年生きたい」世界を作っていきたいです。